・ 飛ぶ天使ミケーレ べヴァーニャ・サン・ミケーレ教会 8号
ローマ期以前からの古いウンブリアの町はたくさんありますが、この町は多分
中世以降の経済的な発展が余り無いままに済み、結果古い物がたくさん残り、
今は観光客が集まる田舎の町、になったのではないか、と。
中心のサン・シルヴェストリ広場に向かい合って残る、モチーフにしたこの
サン・ミケーレ教会と、サン・シルベストロ教会の見事さ!
とりわけサン・ミケーレ教会の扉右脇のこの「飛ぶ天使ミケーレ像」は、
もう片方の「竜を退治するミケーレ像」よりグンと男前で!
はい、お顔の持つ迫力が全然違い、と千年前のマエストロには
失礼ながらshinkaiが断言を。
描こう!と決めた時には、どの様に飛ぶ天使像を描くのか、とかなりあれこれ
考えましたが、いざ描き始めた時には有難い事にその迷いがなくなり、
自分が納得するまで描く事、のみを追いかけたのでした。
・ ナルニの小路 ウンブリア 6号
ローマに流れ下るトスカーナからのテーヴェレ河に、ウンブリアから流れるネーラ川が
合流する地、そしてアドリア海側に連絡するローマ期からのフラミーニア街道も通る、
古代からの交通要所として重要地点であり、町は丘の上の高所にあり、
更に100m上がると堅固なアルボルノス要塞がある、中世からの趣芬々たる町。
あっ、そうそう、ドナテッロの傑作「ガッタメラータ将軍騎馬像」のエラズモ・ダ・
ナルニはこのナルニ出身の傭兵隊長であり、またエローリ博物館にはギルランダイオの
素晴らしく美しい「聖母被昇天像」があり、町の宝の1つと。
そして1979年に冒険好きな少年達が発見した地下教会やかっての異端審問所、
これはなんと19世紀末まで続いていたのが分かったり、壁一面に収容者の文字、
記号等が刻み込まれた牢獄が公開されており、大変興味深い見学が出来ます。
絵のモチーフを頂いたのは、坂の下の駐車場から上って来てのガリバルディ広場
から、町の南にあるアルボルノス要塞に続く少路で、建物の下を潜る坂道。
光が射し込む石段と段差のある素敵な少路に惹かれて描きたい、と思ったのが、
斜めに奥に続く石壁を描くのが難しゅうございましたぁ。
・ トーディの坂道 6号
トーディの町は、ローマ・ペルージャを結ぶ幹線のオルヴィエートから
東に37km、小高い山上400mに位置します。
人口は2万人足らずの町ですが、古代から、そして中世に大いに栄え、
当時の人口は現在の何倍もあったと言われ、その面影が今に残る町。
この絵のモチーフは、中心から南に下がった辺りを辿っていた時、
向こうの道を下ってゆく老婦人を見かけ、
髪はゆったりのシニョンに結い、白いたっぷりのブラウス、そして
白黒コンビの靴、と大変なお洒落さん。
杖をついておられましたが、ゆっくりと坂道を歩く姿に何とも言えない
良さというのか、女の大先輩とでも言うか、あらまほしき姿を見た思いで
一種の爽やかさを感じたのでした。
何とかその時の印象を、と思いつつ、 一面の石壁を描くのが難しかったぁ!
・ アッシジ 春の夕暮れ 4号
アッシジのお祭り、5月初旬に行われる「カレンディ・マッジョ」に出かけると、
サン・フランチェスコ聖堂の向こうに沈む夕暮れを写しに出かけます。
時間を見計らい、聖堂前の広場の端の道を行ったり来たり。
そして聖堂前がまっすぐに見える、少し高い入り込んだお馴染みの小さな広場に
行き、これはそこからの眺めの、でも沈みゆく太陽の位置を少し動かして。
何とも言えないゆったりの時間に包まれた様な、きっと聖フランチェスコの時から、
千年前もこうだったんだろうな、と思えるアッシジの町の時間が過ぎて行きます。
とろんと靄った平野の中に、一筋まっすぐにアッシジの町に向かってくる道が
見え、小さく煌めく光を放ちながら、ゆっくりと山の向こうに隠れて行く太陽。
なんとも素敵な美しい夕暮れの色ですが、描くにはなんと難しい事!
・ ウンブリアの平野風景 ペルージャの高台より 4号P
ペルージャの高台にある歴史ある古い中心地は小さく、その中心を通る
コルソ・ヴァンヌッチをまっすぐ聖堂から南に抜けて行くと、
城壁の上から見えるウンブリアの平野のパノラマが広がります。
日本と違いイタリアの街の外には広く農地、土地によっては葡萄畑、
麦畑が広がり、その空気と色の広がりにこちらの心も広がる気がし、
見える一筋の道を辿ってみたり、見える農家の窓にその一家を思ったり。
旅にあっては誰しもが惹かれる果しない思いでもあり、夢でもあり。
そうして一息ついて後、通りを戻り、さて、お昼ご飯をどこで食べようか、
と、ははは、いつもの散文的日常に、ね。
・ ロマネスク教会後陣 べヴァーニャ 0号
ベヴァーニャは、ウンブリア州アッシジから南に下ったフォリーニョから西に
10km程の平野の中に位置する、ローマ期から中世の遺物がぎっしりと詰まった
古~い小さな町。
アッシジの聖堂に残る、有名な「小鳥に説教するサン・フランチェスコ」の
モチーフは、このべヴァーニャから北のカンナーラの町に向かう道筋の事、
と言い伝えも。
自分で運転して出かけた最初の旅で寄ったのでしたが、当時まるでイタリアに
ついて何も知らずで、平野にある事にまず落胆し、殆ど頭に残らずでしたが、
この絵のモチーフにした千年頃建設の教会後陣、そして教会内部の素晴らしさ、
すぐ前をローマ期のアドリア海に抜けるフラミーニア街道が通っていた、
と教えて貰った事、町に残るローマ期のテルメのモザイクが素晴らしかった事
等などを覚えており、
古い写真を見ていて改めて目が留まった、向かい側にある教会の扉脇上の、
飛ぶサン・ミケーレ像などを描いた事、町のご案内も改めてブログに載せた事
などから再度興味が沸き、
周囲一帯の古い小さな町を改めて回ったら、以前よりも目に留まる物が
たくさんあるのではないか、という気も。
新しく知る事により、逆に新しく出てくる疑問、興味、尽きません!