私の絵の師である二木(ふたつぎ)さん、といつも言っておりますが、
漸くに今回の長野行きで初めて作品を拝見する事が出来、
実物の二木さんにも、そして奥様の竹子さんにも
お会いする事が出来ました。
二木さんとはブログのコメント、メールのやり取りがあり、
長野朝日TVの放送のDVDでお顔も拝見しているので、
そう特別に印象が違うという事もなかったのですが、
やはり、こと、絵に関してはかなり違いました!
実際の絵を見る事であれこれ感じた事が多々あり、
そして漸くに実際にお話出来た事で気持ちも一層打ち解け、
師と呼ぶ方の絵についても書けそうな気がするので、
今回はちょっといつもとは趣向が違うのですが、
二木さんの絵から、私が感じた事あれこれを。
とはいえ、私は評論家ではありませんし、
難しい言葉で高踏的なことを書くのは大の苦手だけでなく、出来ませんので、
同じく絵を描く者の目で見た、大先輩である彼の絵について、です。
最初の絵は、先月伊那の個展に出された最新作の
「高島遠望」

そして「御射鹿池・秋紅」

実物とこれらの写真と何が一番違うか、
それはもう色の違い、絵から受ける印象の深さの違い、とでも!
写真を撮り、ブログ用の大きさに縮小すると、
既に、そこで画質も違ってくる筈ですし、
カメラのレンズは、幾ら進歩して優れた物になっているとはいえ、
人間の目が見る優秀さとは違いますね。
絵を描く側が、力を込め想いを籠めた部分を、
それを見る側の目は直感的に捉えますが、
カメラのレンズは、そうでない部分をもしっかり拾ってくれる、
という余計な優秀さもある上に、ははは、
画面がどうも平板に写る様です。
カメラは、画家が絵に籠めたドラマは写せない、とでも。
今回勝手にここに掲示させて頂く二木さんの絵は、
私が単純に良いなぁ、と思っている絵のほんの一部ですし、
伊那の個展会場で拝見した物が主ですが、
「遠雷」

「久遠の泉」

このアッシジの小さな泉は、私も描いているのですが、
二木さんの絵をブログで最初に拝見した時、まず思った事は、
作品の構成力、というか、どのように描くか、の違いです。
私はまだまだ現場をそのまま、そりゃぁ、多少は変えますが、
自分が描きやすい様に変える程度でして、あはは、
こうして同じ場面を描いた絵で見ると、その違いが良く分かりました。
つまり何をどう描くか、何を見せ、なにを見せずに省略するか、
その為にどうするのか、という
モチーフを自分の内に取り込み、再構築する部分が、
如何に自分に欠けているのか、が分かったと言いましょうか。
今回会場で一枚一枚の絵をためつすがめつ拝見しながら、
あれこれと遠慮なく質問したり、教えて頂きましたが、
再度絵を描き始めた私にとって、
静かで深い世界を描く、静謐な彼の絵の密度が如何に濃いものか、
如何に綿密に描き込んだものなのかが良く分かり、
想像はしていたものの、ちょっと気が遠くなりました!
細い細い微かに見えるハッチングの線、
それでトーンを作る、気の遠くなる様な仕事!
何度も塗り重ね、漸くに出るマチエール!
昔一時日本画を習った事もあったので、
日本画の材料を使って描く事が如何に時間がかかるものか、
早い言葉でいえば、如何に面倒なものか、を知っていますから、
その上でのこの仕事の量、密度!
それらを実際に見た事が、今回の大きな収穫、
師が無言で示してくれた教えだったと思います。
とにかく描く事、描き込んでいく事、
それしかない事を、改めて実際の絵が示してくれました。
「シエナ派の天使」

この天使像は大理石の像なのですが、いわゆる大理石らしからぬ
マチエールで表現され、でも大理石以外には見えない、という・・、
この絵は私の諏訪の会場にも、画廊主さんが掛けて下さったので、
毎日睨んでおりました、ははは。
自分がやはり大理石像の天使を描いていますしね、
ガ~ンとやられたその違いは良く分かりますから・・!
この様に描こうとは思いませんし、描けないでしょうし、ね、
ただこういう凄い絵を見た、という事を忘れずにいようと!
二木さんは日本画で、私はペンと水彩と色鉛筆といういわば洋画。
例えば日本で習おうとすると、普通はあり得ませんが、
お陰さまで、目指す方向が同じという事で、
親しく通信教育で、はは、導いて頂いており、
得がたい絵の師に出会えた幸せ、を思います。
二木さん、どうぞ今後ともよろしくお願い致します!!
二木一郎 日本画 ウェブサイトギャラリー
http://www1.koalanet.ne.jp/galleria2-if/
ブログ「風色明媚」
http://blog.goo.ne.jp/futa2560
今回諏訪の会場に、奥さんの竹ちゃんも来て下さり、
初めてお会いしてその可愛い美しさにも、
そうか、イチコロだったんだろう!と想像できましたが、ははは、
諏訪大社の前宮でのお二人の写真を、ね。

所で竹ちゃんは、着物のデザインと制作がお仕事です。
最初知った時は、一体何をどうするのか良く分かりませんでしたが、
様子を聞くのをとても楽しみにしていたので、
あれこれ話して頂いた事が、大変興味深かったです。
友禅染めのお仕事から始められたのだそうで、
現在は、もっと進んだお仕事をされているのをお聞きしましたが、
ここに書けないのが少し残念です。
が、日本の意匠デザインすべてを踏まえた上でのお仕事。
面白そうと言うと失礼ですが、ある意味で、天下取り!
お家にお邪魔した時、彼女がご自分用に染めた
渋い美しい紫の地に散らした四季の花々、の着物を拝見し、
身にはおって見せて頂きました。
色白の肌に良く似合う渋い紫、そして華やかな花々。
それに合う古い柄の帯も見せて頂きましたが、
日本の伝統意匠を踏まえてのお仕事の方に、
大変相応しい!と思いました。
しゃきしゃきと話され、性格も明るく真っ直ぐ、
そしてこんなプロのお仕事をされている、それも絵に関する、
と知って、実はとても安心致しました。
安心するという言葉は変ですが、
絵を描く人間が如何に自分勝手な部分を持っているか、
それは自分も描く人間で良く知っていますので、
絵を描く上に大変頑固であろう夫、と確信しますが、ははは、
その妻である竹ちゃんは大変だろうな、
と同性として少し気にかかっていました。 が、
畑違いとはいえ、彼女も絵を描き、染めるプロ、と知って、
ああ、良かった! と思ったのでした。
これは、竹ちゃんが下さったご自分で作った袱紗で、
まだどう使ったら一番良いのか考えが浮かばず、
今はPCのキーボードに掛けています。

本当は枝が左下に来るのでしょうが、
折り線の具合から、使いやすいようにこの位置で使っています。
素敵でしょう?!
薄い下描きの線も見え、ぼかしの色入れ、日本の色、
作った人が思い浮かぶ様な手仕事です。
実は古い帯を使ったテーブル・センターの大きなのも頂きまして、
こちらの友人達に見せびらかしています!!
皆驚嘆しますが、こちらはそのうち壁掛けにしようかと。
そんなこんなのお2人の様子も拝見した今回。
これからも良き相棒として、
どうぞ良いお仕事を、たくさんに!!
この記事へのコメント
cucciola
shinkaiさま、
こんにちは。
同じ事物を描いても、描く方によってまったく違うものになるんですね。shinkaiさんの絵にはいつも光があふれている感じ、二木さんの作品には空気にもやがかかっているような感じで、やはり日本画独特の色彩でどちらも本当に美しいです。自らの手から作品が生み出されていく喜び、というのは創造する才があるかたのみの特権で、心からうらやましいです。
奥様も芸術家なんですね!芸術家同士のご夫婦って、魂のぶつかり合いがあって大変、とよく小説なんかでも目にしますが、同じ方向に夫婦で向かうというのはこれまたお幸せなことです。袱紗、とても優美です!
shinkaiさんもどうか、ますますすてきな作品を描いてください。また楽しみにしています。
shinkai
★cucciolaさん、こんにちは! コメント有難うございます。
やはり絵には、描く人間の違いも勿論そうなのですけど、住んでいる環境の違いも大いにあるのではないかと思います。
というのも、日本に住んでいた頃は到底使えなかった色も、着る物も含めたくさんあったのですが、今は色が余り怖く無くなっていますから、イタリアに住む環境からの変化も大きいと思いますし、そしてやはり明るい自然の光がありますね。 これは会場に来て下さった方も、そう仰って下さいました。
はい、二木さんの奥さまも絵を描かれますが、逆に畑違いのお仕事、でも大筋では同じ方向、というので、とても良いのではないかと思いました。 羨ましい事です。
有難うございます! しっかり頑張りませんと、ね。
二木一郎
shinkaiさん、こんばんは!
ぎゃあ~! 恥ずかしい~!
ドッと冷や汗が吹き出しました!
思わず背筋をピンと伸ばして拝見してしまいました!
何とコメントすればいいのやら…。
いやはや…ははは、笑って誤摩化すしかないですねぇ。
そう、実物の作品と写真との、あまりに大きな落差というのは
実際に比べてみたことのある人でないと想像できないでしょうね。
分かっていたつもりなのですが、私もshinkaiさんの作品を実際に目にした瞬間に青ざめましたから!
でもねぇ、ブログに実物を貼り付けることはできませんから、こればっかりは仕方がないですねぇ。
我々絵描きは、とにかく1度作品を直にご覧下さい!と、お願いするしかありませんね。
shinkaiさんと私とは、感性も、考え方も、表現も、技法も、当然異なりますが
目指すもの、最終的な到達点は同じではないかと思います。
自分だけにしか描けないものを描く!! …ですよね。
常日頃から私のことを師匠と持ち上げてくださって気恥ずかしい限りですが
先日実際にご覧になられたように、私のお腹には余計な脂が溜まる一方で重量が増してきております。
これ以上無理して持ち上げようとするとギックリ腰になってしまいますよ!!
辛いですよぉ、ギックリ腰は!
こちらこそ、今後共、どうぞよろしくお願いいたします!!
shinkai
★二木さん、こんにちは! コメント有難うございます。
はい、今回は少し真正面から、と言っても、自分の目の節穴振りをも良く承知しておりますので、逆にその程度に見えるか、と思われるかも知れないと思っておりましたが、ご容赦くださいますよう!
そうですね、多分、自分が良しとする絵、目指す方向が同じなのだと思います。
先行きの長さを考えると、その遠さに絶句しそうですが、有難い事に良き先輩、師に巡り会えました!
ははは、無理はしないタイプでして、ぎっくり腰にもならぬよう、せっせとプールに通い、歩き会にも参加し、
余り離れて置いて行かれぬよう、一生懸命頑張って参りますので、よろしくお願い致します!
kazu
凄く深い意味のお言葉じっくり読ませていただきました。
日本画と洋画で違う画法で描くお二人の画家とお知り合いになることが出来てたくさんの作品にも接すること出来たことうれしくおもいます。
難しいことはわかりませんが求める物は同じそれぞれの個性いっぱいの素晴らしい作品を描いてください。
二木さんの奥様も芸術家で可愛らしい素敵な方ですね。
おめに掛かりたかった!
shinkai
★kazuさん、こんにちは! コメント有難うございます。
そうなんですね、日本画、洋画と分けるのは、描く物が違う訳ではなく、使う材料が違うだけ、だと思います。
とは言っても、もし先生を探すとすると同じジャンルの方で探すでしょうしね、そういう意味で幸運でした。
そしてkazuさんも含めて、長野という繋がりの中でのご縁もあり、やはり運が良かった、としか思えませんね。
有難うございます! 頑張ります。
ええ、またのチャンスに、竹ちゃんとも、ね!